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工務店だけど公共工事を手がける訳

工務店だけど公共工事を手がける訳

工務店と自負していますが、公共工事で団地の改修や小学校の改修を請け負って施工しています。ウチは元来イエづくりばかりして来ました。しかし、僕と工事部長が入社した13年前には大きな工事はしていなかったのですが、今は工事高の半分を担っています。それは浦河町の工事を請け負う会社の縮小によってウチが表立ってきたからに他なりません。他社は職員として現場監督を担う人材をつくってこなかった点がこの状況を生んでいます。ウチは前職に現場監督として経験を積んできた2人がいますが、他社にはいない状況です。人とくに職人さえいれば公共工事はできるという事でやってきました。職人に代理人や主任技術者をやってもらう形で。しかし、徐々に大きな仕事へと変化していくことでマネージメントをしっかりしなきゃいけなくなったり、書類がより複雑化してきたりすることで本職としての現場管理者が必須となってきた際に『いない』と認識されるようになりました。そこで僕らが矢面に立つ形となり受注が増えました。

当初は木造の公営住宅(JV工事)に絞っていましたが、公営住宅の本数が少なくなると同時に民間工事が増えてきました。民間工事が増えた背景にはその間(複数の公営住宅が発注されていた5年間)に民間工事が地域全体で疎かになっていたこと。そして大工の引退者が増加していったことが要因です。大工の引退者は定年で余生をとはならずに亡くなってしまうケースが多く。僕はそれを『前のめりに倒れる』と言っています。ひたすら現役で全力で走って『前のめりで倒れる』。それは本人や家族にとって幸せなのか?といつも問うてしまいます。長く苦しむことなく、現役のまま逝けるのは本望という職人は多いです。ですが、少しだけゆっくりして孫の成長や奥さんとの時間を共有するということはより善い時間となるということもありえたのではないか?といつも思ってしまうのです。

なぜ『前のめりに倒れる』まで走り続けるのか?それはマズローの欲求5段階説による【安全の欲求】が満たされていないからに他なりません。

マズローの欲求5段階説

生理的欲求:生きていくために必要な基本的・本能的な欲求。人間の本能である「食欲」「睡眠欲」「排泄欲」などが当てはまり、これらの活動が満たされなければ生命維持が不可能になります。

安全の欲求:心身ともに健康でかつ経済的にも安定した暮らしをしたい欲求。身の危険を感じる状況から脱して、少しでも安心できる環境で暮らしたいという欲求につながります。

社会的欲求:友人や家庭、会社から受け入れられたいという欲求。集団への帰属や愛情を求める欲求であり、「帰属欲求」とも表現されます。この欲求が満たされない状態が続くと、孤独感や社会的不安を感じやすくなり、鬱に陥るケースもあるのです。

承認欲求:他者から尊敬されたい、認められたい」という欲求。地位を求める「出世欲」もこの欲求に当てはまり、③までの外的な欲求ではなく、内側の心の欲求を満たしたいという考えに変わります。承認欲求を獲得することは、行動のモチベーションになり、自分のポテンシャルへ気づくきっかけや、成長の原動力になっていきます。低位の他者承認と高位の自己承認に分類され、この承認欲求が満たされず妨害されると、劣等感や無力感などの感情が生じます。

自己実現の欲求:自分の世界観や人生観に基づいて『あるべき自分』になりたいと願う欲求のことです。自分にしかできないことを成し遂げたい、自分らしく生きていきたいという欲求であり、理想の自己イメージと一致していることを指します。

僕が代表となった時に【季節雇用】から【通年雇用】へと変えました。【季節雇用】とは寒冷地域における冬期に閑散する職業において12月15日から3月31日まで失業する形を続けていれば特例手当として3ヶ月分の失業手当を失業から3週間程度で支払う制度です。しかし手当は直近の70%程度。なので貯金を削るか大工さんならば自分でできる仕事を個人から受けて凌いでいました。しかし、公共にて9月より町内業者はかかりきりになり、供給量が不足して仕事が増える状況にありました。また前述のように地域の大工さんがドンドン減っていくことが供給量不足に拍車をかけており、『人口減よりも職人減の方が急激である』が故に『田舎だから仕事がある』という状況を生んでいます。立地も要因としてあり、市には車で片道2時間以上掛かるので市からは大きな工事以外ではそうそう来ないです。新築工事においては来るので仕事が増えたという部分で修繕・営繕工事は地元の業者、新築工事は地方(都市部)からの業者という構図に様変わりしました。

【通年雇用】をすることで【安全の欲求】を満たす事につながり、【社会的欲求】を満たすためにウチとまちがどのように外の地域から見えるかというために積極的な露出と発信をして、社員に見せていくことで社員の徐々に言動が変わっていきました。

話を公共工事へと戻します。公共工事を代表となった時から『大工さんの仕事が少ない工事』へとシフトしています。初めに書いたように団地の改修工事や小学校の改修工事へと。それは大工さんは民間へ公共工事は外注で基本することで、『供給量不足の解消』と『ひとづくり』を同時に推進するためです。

 

 

『供給量不足の解消』

【通年雇用】とすることで3ヶ月働ける日にちは増えています。浦河町や周辺の様似町、新ひだか町やえりも町は雪が少ない地域です。ですので吹雪や雪かきで止まることは少ないので外壁改修や内部工事においては全く問題なく仕事ができます。また、新築工事においても防寒養生と暖房をすることで基礎工事もできなくはない。本当にシバれる1月中旬までに完了できるスケジュール管理をすればゴールデンウィークには完成する事ができます。そのように『供給量不足の解消』を今いる人員でおこなっていくためにはまずは日数の確保から進めてきました。

 

『ひとづくり』

公共工事は工事金額が大きい工事が多くなってきています。それは実績がついてきた点と他社が衰退している点の相乗によるところと、発注する内容としても修繕時期のモノがとても多いという点からです。大きい工事の大半は外注工事となります。しかも地方(都市部)の専門業者や特種業者にお願いする案件ばかりとなります。実質現場監督によるマネージメントにより完工できる場合がほとんどです。そのため現場監督は取られるが大工さんは動かないとなってしまうので、大工さんを動かすためにはもう一人の現場監督がすべてを見なくてはいけません。ウチでは僕と工事部長でやっていました。先代が存命中は3名体制でしたが、2名で約10名をフルに動けるようにしなくてはいけなかったのですが、昨年より工務に1名、総務兼工務として1名入社してもらいました。そしてマネージメントについても若手(といっても50歳以下)の大工さん3名に手分けしておこなってもらうように組織づくりをしてきました。3年くらいを通じて今は大多数の部分を補ってもらっています。そのような仕組みづくりの勉強などに費やすお金を産み出してくれているのは【公共事業】です。工事金額も大きく戸建て建築よりも利益額が大きいのでそれを使って組織化と採用にチカラを注いでいます。組織化はチームビルディングです。チームで働くことで生産性が上がります。そしてより強みを生かした働き方を可能とします。そうすることで自己実現ができる組織となる事は採用にもつながり、それはひとづくりに他なりません。

 

このように【公共工事】をすることは民間工事の『供給量不足解消』への道筋であり、まちのお金をできる限りまちへ残すための策でもあります。故にまちづくりの一環なのです。

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