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「自分よし」は、いちばん最後。倒産を経験した僕が浦河で知った「五方よし」

「自分よし」は、いちばん最後。倒産を経験した僕が浦河で知った「五方よし」

大学4年の夏、僕は「大学生らしいことしたーい!!」という、きわめて薄い動機で北海道のど田舎に飛んだ。

大学4年間、長期インターンで会社に通い、学生らしくないことばかりしてきた僕にとって、「大学生らしいこと」とは「有り余る時間を使って、ノリと勢いで何かをすること」だ。そのノリと勢いで応募したのが、浦河町の工務店・神馬建設のインターンだった。

これだけだと「大学生らしいこと」のためだけに来た人みたいなので、建前も書いておく。

僕は今、公共交通のtoG(行政向け)スタートアップに参画している。生まれも育ちも都会の僕が、地方を知らずに、地方の課題に手触り感を持って寄り添えるのか。そんな疑念が、応募の動機の半分を占めていた。残り半分はやっぱり「大学生らしいことしたーい!!」である。この二つは両立する。人間の動機は、いつだって複合的だ。

応募前のイメージは「特にない」。Wantedlyで「面白そうだな〜」と思っただけで、あとは何も考えずワクワクしていた。こういう人間が書く体験記は、往々にしてうっす〜いものになる。だから今回は、ちゃんと書きます。

神馬建設とは

神馬建設は1972年創業、浦河町に根ざした工務店だ。社長は3代目の神馬充匡さん。

この会社は「家(house)」ではなく「イエ(home)」をつくると言う。建物としての家ではなく、帰る場所としてのイエ。100年持つ家をつくり、ライフスタイルの変化に合わせて形を変えられる、余白のある設計をする。子ども部屋が必要になっても、夫婦二人になっても、親の介護が始まっても、住みやすい家だ。

僕が働いてきたスタートアップの世界では、「100年持つ」という発想はまず出てこない。とにかく早く大きくなる。目の前の利益に必死で、3年後のことなんて誰も考えられない。この時点で、僕の知っている「仕事」とは時間の単位が違った。

キャリア講義で出会った「五方よし」

神馬さんのキャリア講義で、特に心に刺さったのが「五方よし」という考え方だ。

五つすべてが揃って、はじめて「よし」と言える。近江商人の「三方よし」を、「未来」と「自分」まで広げたような考え方だと思った。

中でも「未来よし」が、僕の心に突き刺さった。

なぜ「未来よし」が刺さったのか

理由は単純で、僕は大学1〜2年生のとき、倒産しかけのベンチャー企業でインターンをしていたからだ。

その会社で僕は、社長と一緒に新規事業を立ち上げ、新たな収益源をつくろうとしていた。そして来る日も来る日も、こう考えていた。

「これを、会社がもっと安定していた2年前にやっていたら、どれだけよかっただろう」

結局、新規事業が軌道に乗る前に会社のキャッシュが尽き、コアメンバー3人を残して全員が退職した。そしてまもなく、倒産の知らせを聞いた。社長が僕たちに退職を告げ、頭を下げていた姿を、今でも忘れられない。

未来を考え始めた時点で、もう手遅れだったのだ。

この経験から、「未来のことは、今のうちから考え続けなければいけない」と胸に刻んできた。だから神馬さんの「未来よし」という言葉は、僕の過去と正面から握手した。

100年持つ家をつくる会社は、「未来よし」を最初から組み込んでいる。数年で潰れたスタートアップは、「今しか」「自分しか」見えず、生き残るのに必死で、未来を考えるのが遅すぎた。時間の考え方が、真逆なのだ。

青空の下に広がる浦河の海岸
インターン中に見た浦河の海。空と海の広さに、時間の流れ方まで違って感じた。

建物を見て感じた、仕事の「向き」

神馬さんと一緒に神馬建設の建物を見て、一番素敵だと感じたのは、そこで考えられていることの「向き」だった。

「利益のため」でも「自分のため」でもなく、「地域のため」「人の人生のため」に考え抜かれている。仕事の向こうに、住む人の人生が透けて見えた。

顧客の人生に寄り添って、住み続けられるように。仕事がそちらを向いている。そこが素敵だと思った。

僕が働いてきたスタートアップでは、働く理由は「今の会社の生存のため」「自分の安定のため」だった。誰のための仕事で、何のためにやっているのか。深く考える余裕すらなかった。

相手や社会のためを本気で考えられない仕事は、結局うまくいかない。そして最後には、自分を傷つけることになる。僕はそれを身をもって知っている。

五方よしの、最後の順番

五方よしを、もう一度順番に並べてみる。

最後は「自分よし」だ。相手、世間、つくり手、未来。そのすべての後に、ようやく自分が来る。

この順番に、僕は納得した。相手のため、社会のため、つくり手のため、未来のために働くからこそ、安心して自分の幸せを味わえる。その理念を共有する会社があることを、今夏のインターンで知った。

さて、ここまで読んでくださったあなたに問います。

あなたの仕事は、誰の・何のための仕事ですか?

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