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この町を歩いて見えてきた、浦河町の静かな魅力

この町を歩いて見えてきた、浦河町の静かな魅力

2026年春のインターンで来たオオギです。

この町で私は、気づけば10万歩も歩いていた。もともと自分は歩くことが特別好きなわけではない。普段であれば、せいぜい1日に5千歩ほどだろう。それなのにこの浦河町では、なぜか自然と足が前に出て、結果として10万歩に達していたのである。7日間という短い期間での出来事だったが、日常生活では到底経験しないような数字であり、自分でも驚きを隠せなかった。

そもそもこの浦河町という場所は、北海道の南部に位置し、襟裳岬のやや西側にある町である。人口はおよそ1万1千人、面積は約700平方キロメートルと広大でありながら、「丘と海のまきば」というスローガンを掲げている。実際に訪れてみると、その言葉の通り、自然の豊かさや空の色の変化が印象的で、どこか特別な空気を感じさせる場所であった。札幌から車でおよそ三時間と、決してアクセスが良いとは言えないが、その分、都市の喧騒から離れた静けさが保たれている。

ではなぜ、私はこの町でこれほどまでに歩いたのか。その理由はいくつかある。まず一つは、単純に交通の便があまり良くなかったことだ。鉄道は廃線となっており、移動手段は主にバスに限られる。しかし、その本数も決して多くはなく、思い通りに移動することは難しい。そのため、自然と歩くという選択をするしかなかったのである。とはいえ、ただ不便だから歩いたというわけではない。そこには、歩きたくなるだけの魅力が確かにあった。

もう一つの理由は、この町の風景に強く惹かれたからである。特に印象に残っているのは、海に面した場所から見た夕日だ。太平洋に沈んでいく太陽は、空を赤や橙、紫へとゆっくりと染め上げていき、その移ろいは見ていて飽きることがなかった。日中の空もまた美しく、時間帯によって全く異なる表情を見せてくれる。私はその変化を少しでも長く感じていたくて、気がつけば何度も同じ場所へ足を運んでいた。

さらに、町の中を歩いていると、人の少なさゆえの静けさや、自然との距離の近さを実感することができる。普段の生活では感じることのない、ゆったりとした時間の流れがそこにはあった。何か特別な目的があるわけではなくても、ただ歩くだけで心が満たされていくような感覚があったのである。

私の宿泊場所から海沿いの丘までは、片道でおよそ三十分ほどかかる。往復すれば一時間だ。しかし、その道のりさえも苦にはならなかった。むしろ、吹き抜ける風や変わりゆく景色が心地よく、歩くこと自体が目的になっていたように思う。私は滞在中に何度もその道を往復したが、そのたびに違った表情の風景に出会うことができた。

こうして振り返ってみると、10万歩という数字は単なる結果に過ぎない。大切なのは、その一歩一歩の中で感じた風や光、そして景色の記憶である。浦河町で過ごした時間は、私にとって特別な意味を持つものとなった。何気ない日常の中では見過ごしてしまいがちなものの美しさを、この町は静かに教えてくれたのである。

そしてまた、機会があればあの場所を訪れたいと思う。歩くことの楽しさや、風景と向き合う時間の尊さを、もう一度感じるために。

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