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人と自然が混じり合うマチ

人と自然が混じり合うマチ

海と馬が、同時に日常にあるまちを知っているだろうか。

北海道南部に位置する浦河町。人口約1万1千人、太平洋に面した小さなまちだ。海沿いの道を歩いていると、ふと視界の端に馬の姿が現れる。柵の向こうで草を食む馬と、その背後に広がる鉛色の海。この組み合わせが、ここでは普通の景色だった。
まちの規模は大きくないが、暮らしに必要なものはひと通り揃っている。個人経営の店が多く、人と人との距離が近い。知らない人でも、普通に挨拶してくれる。最初は少し戸惑った。
冬の牧場では、服をまとった馬たちが白い息を吐きながら立っていた。その姿を見ていると、自分がどれだけ遠くに来たのかを実感した。
夕方、海岸へ向かった。人の姿はなく、波の音だけが響いていた。水平線に沈む夕日がオレンジ色に水面を染めていくのを、どれくらい眺めていただろう。気づいたら、すっかり暗くなっていた。
まちを歩くうちに、特に印象に残った場所が2つあった。どちらも、浦河のマチの日常が詰まっている場所だ。

【ラーメンまさご】
まちの一角に、銭湯と繋がった食堂がある。「ラーメンまさご」。ゲストハウスも営む大久保さんが切り盛りする店だ。
扉を開けると、カウンターの奥から大きな声が飛んできた。家族連れ、常連らしき顔なじみ、若者のグループ。夕食どきの店内は、静かな浦河の夜とは打って変わって、にぎやかだった。よそ者の自分も、気づけばその空気の中に溶け込んでいた。
味噌ベースのクリーミーなスープに太麺が絡む。重たくないのに、しっかりしている。どこか、このまちに似ていると思った。

【大黒座】
海のすぐそばに、木造の映画館がある。北海道内でも最古の部類に入る「大黒座」だ。
初めて来たと伝えると、オーナーが館内を案内してくれた。茶色の椅子、柔らかな照明、50人ほどの小さなホール。都市部の映画館とは全然違う、静かで落ち着いた空間だった。上映中、音はやわらかく空間に広がり、気づけば物語の中に深く入り込んでいた。
映画が終わり、外に出ると波の音がした。

一週間の滞在で触れられたのは、このまちのほんの一部だ。それでも浦河には、ここにしかない時間が流れていた。この景色を、ずっと誰かが守ってきたんだなと思った。

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