浦河町に滞在している間、私は多くの町民の方々と話す機会を得た。その際、自己紹介として「熊本からワーキングホリデーで来ました」と伝えると、多くの方が驚いた表情を見せ、「どこで働いているのか」と尋ねてきた。そこで「神馬建設という会社です」と答えると、ほとんどの方が「ああ、神馬さんのところね」とすぐに理解される。この反応は非常に印象的であり、最初は正直なところ驚きを感じた。というのも、一企業である工務店の名前が、ここまで地域住民に広く認知されているとは想像していなかったからである。
さらに会話を続ける中で、「神馬さんが本を出版されたのを知っているか」「インターンのような取り組みをしているのはすごい」といった声も多く聞かれた。こうした言葉から、神馬建設が単なる建設会社としてではなく、地域に対して積極的に関わり、その活動が評価されていることがうかがえた。つまり、神馬建設は地域社会の中で信頼を獲得し、その存在が広く受け入れられている企業であると感じたのである。
このような地域からの認知と信頼の背景には、神馬建設の理念や取り組みが大きく関係していると、インターンを通して実感した。本インターンでは、「ウチをしる」「マチをしる」「ワレをしる」「コトをしる」という四つのテーマが設定されており、それぞれに基づいた活動が行われた。その中でも特に印象に残っているのが、「ウチをしる」のプログラムである。この活動では、神馬さんから分厚いテキストが配布され、会社の理念や事業内容、さらにはキャリアに関する講義が行われた。
キャリアについての話の中で特に重要だと感じたのは、「価値基準を持つこと」の大切さである。神馬さんは、自分の価値基準を明確にすることが、人生においても仕事においても重要であると繰り返し述べられていた。現代の就職活動は、かつての就職氷河期とは異なり、人手不足の影響もあって選択肢が広がっている。そのため、周囲に流されて早く就職先を決める必要は必ずしもなく、自分の理想や価値観に基づいて進路を選択することが可能である。
しかし、その一方で選択肢が多いからこそ、自分自身の軸がなければ判断に迷い、結果として周囲の価値観に流されてしまう危険性もある。そうした状況の中で、自分なりの理想や指針を持ち、それに基づく価値基準を確立しておくことは、主体的な選択を行ううえで不可欠であると感じた。この考え方は、個人のキャリア形成にとどまらず、企業の在り方にも通じるものである。神馬建設が地域から信頼されている理由も、このような明確な価値基準を持ち、それに基づいた一貫した行動を続けている点にあるのではないかと考えた。
また、印象的であったのは、これらの考え方が単にテキストとしてまとめられているだけでなく、神馬さん自身の思考や行動に深く根付いていると感じられた点である。インターン期間中、夕食の時間や移動中、さらにはスナックでの会話の中でも、講義で聞いた内容と重なる話題が何度も出てきた。これはつまり、理念や価値観が表面的なものではなく、日常の意思決定や言動にまで浸透していることを示している。そのような姿勢が、社員や地域住民からの信頼につながっているのだと感じた。
さらに、神馬建設はワーキングホリデーやインターンといった取り組みを通して、地域外の若者に対しても積極的に関わりの場を提供している。これは単なる人材確保のための施策ではなく、個人の成長や地域の活性化、さらには社会全体への貢献を視野に入れた活動であると感じた。実際に、私自身もこのような機会を提供していただいたことに対して、大きな感謝の気持ちを抱いている。
以上の経験から、神馬建設は単に建物をつくる工務店ではなく、「人」や「地域」と真摯に向き合う企業であると確信した。依頼主一人ひとりに対して丁寧に向き合い、その人にとって最適な形を追求する姿勢があるからこそ、地域からの信頼を獲得しているのだろう。そして、その根底には一貫した価値基準と理念が存在している。今回のインターンを通して得たこの気づきは、今後の自分自身の生き方や進路選択にも大きな影響を与えるものであると感じている。